ホビット ⸺ファンタジーの金字塔トリロジーの序章⸺
ファンタジーの名作、ホビットと指輪物語をみなさんご存知ですか?今回、僕は趣味の読書としてかつて挫折したホビット、指輪物語、シルマリルの物語という3部作を読破してみようと思い立ちました。実は、高校生の時にホビットは一度読了したことがあるのですが、指輪物語の途中で挫折してしまったのです。今回、久々のチャレンジで、ホビットまで読み終えましたのでせっかくなので記事にしてみることとしました。
最初からネタバレは書かずに、指輪物語の世界の概要と魅力だけを皆さんにお伝えしてから、ホビットをこれから読みたい人のために、岩波少年文庫版と原書房の注釈版の2冊の内どちらを読むのがおすすめなのかということを記します。その後で、ネタバレを含む自分なりの考察も書いてみたいと思います。
今回僕は、思い切って注釈がたくさん入ったよりマニア向けの原書房版を購入し、読んでみました。こちらの方が表紙に重厚感が有って興味をそそられたんですよね。
結論から言うと、結果は大成功でした。次からまだこの本を手に取っていない方向けの解説を先に書いて、その後ネタバレ感想を書いていきます。
指輪物語を中心とした物語の流れ
指輪物語、およびホビット、シルマリルの物語のいずれも、J.R.R.トールキンというイギリスの作家兼言語学者の著作です。作品全体がファンタジー世界の中で展開されます。
ホビットはトールキン氏が子供向けに作った童話で、そこからその作品中で重要なアイテムとなった指輪を、より作品のキーとして広げたのが指輪物語です。
とは言っても取ってつけたような後付け感は全くなく、指輪物語は巨大で重厚長大な、それでいて人を飽きさせない素晴らしい作品になっています(僕は挫折していますが…😅)。
シルマリルは、その巨大なファンタジーとなった指輪物語の中で出てきた話、例えば始まりの時点より前の話などを補足するような、様々な語りきれなかった部分を見せてくれる様な話になっています。ただ、読むのはこれからなので伝聞ですが…。
ホビットは元々トールキン氏のお子さんに聞かせるための童話でした。そういった経緯も有って、ホビットが一番対象年齢は低め、小学生高学年くらいから、という感じです。指輪物語はかなり長いので中学生以上、そしてシルマリルの物語は高校もしくは大人向けという感じでしょうか。
ホビットの長さ
原書房の注釈版は、ダグラス・A・アンダーソンさんというトールキン研究で知られる方が、ホビットに注釈をつけたものを日本語訳したものです。注釈が始まるまで(主に本編)が、上巻で246ページで、上巻の最後のページ(つまり注釈を含めた全体)が362ページ。下巻はそれぞれが275ページ、416ページ。となっています。下巻には『エレボールの探求』という、30ページほどの指輪物語の後日談も入っていますので、下巻の注釈部分は上巻に比べると少なめですが、しかしどちらも本編が終わった後に100ページ以上の圧巻の量の注釈が存在することになります!
注釈の内容は極めてマニアックで、主人公達の食事を初めの版ではトマトとしたものを、イギリスから見て外来種なので、より昔のイギリスらしくなる様ピクルスに変更した、という話であったりとかです。
また、指輪物語、ホビットともに家系図がよく出てくるのですが、それと照らし合わせた上でのトールキンの設定ミスに対する言及、例えばあるご先祖が大大大大叔父と書いてあるが別の場所からすると大大大叔父となるはずでどちらが正しいのか、といった事などが書いてあります。
こう書いていると、どうでも良いな、と思えてしまうかもしれませんが…その詳しさが僕には新鮮ではありました。ただ、注釈を読みこなせなくても別に問題なく本編は読めます。
岩波版と原書房版の比較
岩波版は瀬田貞二さんという方が翻訳をなさっています。この方は指輪物語が初めて出版された時に翻訳を担当された方でもあり、指輪物語との親和性は高いです。ホビットを読んだ人は指輪物語も読むことが多いでしょうからね。
一方、原書房版は山本史郎さんという方が翻訳されています。こちらは翻訳の時期が岩波版より40年近く後ということもあり、だいぶ読みやすくなっていると感じました。やはり翻訳は新しいものの方が読んでいて楽なんですよね。
一部で、山本さんの訳が瀬田さんに比べて軽薄過ぎると感じる人もいるそうなのですが、僕は全くそう思いませんでした。今となっては気にならないのではないでしょうか。また、山本さんの訳は最後の解説で訳出の工夫について語ってくれているので(この辺りは完全に大人向けの本として出している原書房ならではです)その辺りの工夫が面白かった部分もあり楽しめます。注釈が長すぎて読めない人も、翻訳についての解説部分だけは読む事をお勧めします。
最初つまずいた注釈の略語
ホビットは初版本が“Allen & Unwin”という会社から1937年に出ています。従って注釈本に書いてある1937というのは初版本のことを意味しています。“Unwin”と書いてあればこの会社のことですし、例えば“Houghton Mifflin”という会社は“HM”と略されます。それ以外の略語も、大抵出版社名と発行年の略です。
詳しくは、Wikipedia英語版のホビットの出版物一覧、English-language editions of The Hobbitのページをご覧下さい。
結局原書房と岩波どちらがおすすめ?
結局おすすめは、完全な初心者は岩波少年文庫から、少し指輪物語について知っている人は原書房がおすすめという感じですね。トールキンが、指輪物語を書いてから、整合性の維持のために、ホビットの内容をいじったことなんか、びっくりする様な詳しさで書いてあって、解説を書いた方の狂気を感じるほどです。指輪物語愛が垣間見えて、楽しいですよ!!
また、指輪物語を研究している人にとってはこの注釈は宝の山だろうと思います。指輪研究をするならどの道避けては通れないでしょう。
買ってはみたものの注釈についていけなかった…ということが有ってもOK!その場合は注釈は読まずに本編だけ読みましょう!繰り返しになりますが、普通に楽しめる様になっています。
ここからはネタバレ注意
ここからはネタバレとして感想を書いていきます。ご注意下さい!!
憎めない、魅力的な悪役たち
ホビットの魅力は、楽しく、かつ読者の感覚に近い性格を持ったビルボや、人間的な魅力にあふれたガンダルフなどの光の勢力だけでなく、途中で出会うことになる様々な敵達にもあると思います。
恐ろしいながらも愚鈍である巨人達や、ビルボを樽に入れて流してしまうエルフ達、ビルボに敵意を向けながらも、哀愁をどこかに漂わせるゴラムなどです。スマウグは最後まで可愛げのないやつでしたが。
ビルボとゴラムの間で交わされるなぞなぞのやりとりは、シンプルに面白かったです。
スマウグのあっけない最期
スマウグがビルボとした会話は作中随一の迫力があるシーンです。スマウグの言葉は圧倒的な強者のたたずまいを感じさせるものでした。
しかし物語が進むとスマウグが戦ったのはビルボ一行が通過した町である湖の住人達で、しかも割とあっけなく湖の住人に殺されます。そこはビルボが倒して欲しかった😅
この展開は意外でしたが、危ない道を渡りながら、漁夫の利を得るというのがビルボらしいのかもしれません。
強欲は罰せられる
スマウグを倒してからはスマウグの宝をどの様に配分して相続するのかで延々と揉めます…。この相続争いの長いこと!
ドワーフの頼れるリーダー的な存在であったトリンが宝の分配について徐々に頑迷になっていき、湖の民を苦しめます。この辺りは全くワクワクしない展開で読んでいて辛かったですね。そして、トリンの強欲は悲惨な最期を予感させるものがありました。
結局宝の中でも軸となる存在であったアルケンストンを掴んだビルボが争いの鍵を握ります。ドワーフでも湖の民でもない外部の勢力が争いに加わり、トリンは命を落とします。
悲惨な話ですが分不相応な強欲は厳しく罰せられるというのがトールキンの語りたかった一つのテーマだったのだと感じました。ここが、児童文学たるホビットの一つの大きなテーマで、作品を深く特徴付けるものだと思います。
まとめ
今は少しずつ指輪物語を読み進めています。この記事がどこかで誰かの役に立つことを祈っています。繰り返しになりますが、原書房版を買って注釈を読まないのも有りです。普通に楽しめます。
それでは皆様、良いホビット読書ライフを!
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